グローバルデンチャー
2012年02月01日義歯の大御所である、福島県の松本先生による総義歯のプレアドバンスコースの研修が修了しました。
京都郊外での4回コースで、非常に充実した、中身の濃い研修でした。
歯科の基礎的学問(解剖学、生理学、理工学など)に基づく、科学的な臨床は心酔してしまいます。大学では教えない細かな部分、誰も気がつかないディテールにメスを入れた理論構築は本当にすばらしいものです。
最近は、栄養状態の改善や、口腔衛生の啓蒙活動が進んだ影響もあり、歯を失う本数が減り総義歯(総入れ歯)の方は都会ではあまり見かけなくなりました。
しかし、総義歯の方の多くは、義歯を使って上手く咀嚼(食べて飲み込むこと)ができずに悩んでおります。
ここで総義歯の難しい点を抽出してみます。
一般的に、「作るのも、使うのも大変難しい」ということが挙げられます。マスコミでは多くの義歯安定剤の広告が流され、飛ぶように売れているというのも当たり前です。
本来であれば、このような薬を使わずに、痛く無くしっかり咬めて、咀嚼できれば一番良いのですが、歯が全く無いので入れ歯を安定させることがとても難しいのです。
私が、歯科医師になって間もない頃には明治生まれの総義歯の方が大勢いらっしゃいました。
忍耐強い方が多かったのか、合わない入れ歯でも、「大丈夫、痛ければ歯茎で咬めばよい」と言って、口の中が傷だらけになっていても平気で使っていました。
しかし時代は変わり、昭和生まれの総義歯の方は咬める入れ歯を求めております。
義歯を作る側の技術としては、膨大な知識と技術と経験が必要であり、その三者がバランスよく整って初めて咬める入れ歯ができます。
また、「入れ歯を使っていくうちに自然に慣れていく」と思われている方が意外に多いのですが、入れ歯は人工臓器であり、簡単に慣れるものではありません。特に新しい義歯を使い始めるときには、咬む事はリハビリテーションとして捉え「積極的に慣らしていく」必要があります。
この研修では、総義歯のセット時に硬焼き煎餅をバリバリ食べるといったパフォーマンスを見せてくれました。すばらしい技術だと思います。やはり、咬める義歯は誤嚥性肺炎、認知症の予防に役に立ちます。
また、京都駅から近鉄線で30分程行った研修会場周囲は長閑な田園風景で、美味しい蕎麦と、京料理を出すお店があり、料理も堪能しました。とても印象に残る良い研修会でした。
- 前のページ:ゴーヤ(苦瓜)の素晴らしき効能
- 次のページ:山科の記憶